【働きビト】Vol.02 毒舌“執事探偵”を生み出した人気作家・東川篤哉
「学生時代から最初の短篇がコンテストに入選するまで、1つの作品を最後まで書いたことはありませんでしたし、作家になろうなんて思ってもいませんでした。大学を出て、普通に一般企業に就職したんですけど・・・馴染めなくて(笑)。いわゆるダメ社員だったんです。だから“続けられない”と思って、会社を辞めたんです」。その後も、すぐに「作家へ」という計画はなかったという。
しかし、30代の背中が見えてきたころ、世間の同世代の男性たちは結婚や昇進といったおめでたい話が飛びかうなかで、会社を辞め、10年後の自分も想像できずにひたすら家にこもって執筆を進め、完成すれば入選の保証もないまま応募。こんな毎日を何年も続けることは、並大抵の精神力では出来ないはず。「不安は不安でした。でも、僕は孤独に強いんです。ずっと一人で、1ヶ月ぐらい誰とも話さなくても平気。孤独にだけは異常に強い」と、おっとりした口調で肝の据わったエピソードを明かした。
「ただ『謎ディ』を書くときに、初めて女性読者を意識しました。掲載誌が若い女性向けの雑誌『きらら』(小学館)だったので、女性に受け入れやすいキャラクターをと思って、以前から構想があった“執事探偵”を起用しました」。東川氏の思惑は見事に当たり、本格ミステリでありながらも、主人公たちのケレン味たっぷりな会話劇は女性読者の獲得に成功した。
「執事という礼儀正しくて、几帳面で利口。そんな品行方正で、ただただカッコいい探偵という主人公を書き続ければ、僕が退屈してしまう。だから、真逆なことをやらせたかった」と、毒舌キャラの執事探偵・影山の誕生秘話を告白した。
「ただし、影山には決めセリフが無いんですよね。毎回違った言葉で罵らなくてはならない(笑)。ですから謎解きの前に“コレ”という強いセリフを考えることは、結構苦しくなってきましたね」と、人気キャラクターに育ったからこその悩みもあるようだ。
「ただし、人がやってないトリックを見つけて書く喜びはあります。それは執事探偵を書く時もそうでした。モチベーションになるかどうかは分からないけど、まあ好きだってことでしょうね」とイタズラっぽく笑い、チャーミングな一面も披露してくれた。
【プロフィール】
作家 東川篤哉(TOKUYA HIGASIGAWA)
1968年生まれ。広島県出身。ユーモアミステリ『謎解きはディナーのあとで』が2011年に「第8回 本屋大賞」を受賞。
作家 東川篤哉(TOKUYA HIGASIGAWA)
1968年生まれ。広島県出身。ユーモアミステリ『謎解きはディナーのあとで』が2011年に「第8回 本屋大賞」を受賞。
出演:櫻井 翔/北川景子/椎名桔平 他
監督:土方政人/脚本:黒岩勉/音楽:菅野祐悟
原作:東川篤哉(「謎解きはディナーのあで」小学館刊)
■公式HP:http://www.nazotoki-movie.jp/(外部リンク)