【働きビト】Vol.15 アミューズの“落ちこぼれ劇団”10周年の決意

 サザンオールスターズや福山雅治といった、超売れっ子アーティスト、俳優たちが所属する大手芸能プロダクション・アミューズ。そんなビッグネームたちの華々しい活躍の裏で“赤字になったら即解散”という厳しいルールの元、地道に活動し続ける演劇集団がいる。その名も「劇団プレステージ」。発足から今年で10周年、チケットが売れなかった暗黒時代を経て勢いに乗り始めた彼らがこの夏、自己最多の1万人動員を目指した公演『Have a good time?』を東京、大阪の2都市で開催する。節目の年に活動を振り返ってもらいつつ、劇団にとって勝負となる本公演への意気込みや今後の決意を、リーダーの今井隆文、猪塚健太、平埜生成の3名に語ってもらった。

チケットを手売りしていた暗黒時代

  • リーダーの今井隆文

    リーダーの今井隆文

――2010年に旗揚げした劇団プレステージですが、2005年のユニット発足から数えると今年10周年。おめでとうございます! 劇団には“赤字になったら解散”というルールがあって、これまで苦労も多かったと思いますが。

今井隆文そうですね。旗揚げ前にユニットでやっていた5年間が暗黒時代でしたね。
平埜生成僕は2009年に入ったんですけど、当時はチケットが本当に売れなくて。 団員総動員で友だちに声をかけたり、専門学校などに「観に来ませんか?」と声をかけに行ったり。あの時が一番大変でしたね。

――でも、旗揚げ後は順調に劇場が大きくなっていきましたね。その手応えはありましたか?
今井嬉しいことにチケットが買えないっていう人が出てきて、それで少しずつ会場が広い劇場に変わっていって。 今回ついに紀伊國屋サザンシアターでやれるのかと思うと嬉しいですね。
平埜でも、動員数がこれまでで一番多いので、今は昔みたいにまたチケットを手売りしています(笑)。
  • 猪塚健太

    猪塚健太

――(笑)。でも立ち上げの頃と比べると、観客数はすごく増えている。何がきっかけでファンの方が増えてきているんだと思いますか?
猪塚健太事務所主催で『Amuse Presents SUPER ハンサム LIVE』っていうイベントを開催しているんですけど、それに出た時に注目してくれたり、あと僕と生成はミュージカル『テニスの王子様』に出ていたりもするので、そこで若い世代の方にも観に来てもらえるきっかけになったのかな?という実感はあります。

――劇団をやっていて良かったなと感じることって何でしょう?
今井劇団では準備など、裏方の作業も全部自分たちでやっているので、そもそもの芝居をする環境を整えるのに時間がかかってしまうこともあります。 でも俳優の視点だけじゃなくて、舞台を作る裏方の視点も持てるので、それは良かったなと思います。
平埜今の若手俳優で劇団に所属している人って結構少ないので、「良いな」「うらやましいな」って言われることは多いですね。
猪塚それって、よりどころがあるって思われているんじゃないですかね。 僕は劇団に所属しているせいなのか、先輩俳優さんとの距離が早く縮まって、優しくしてもらえることが多いかもしれないですね。
平埜確かにそれはあるかも。
今井平埜や猪塚はカッコイイ系の俳優なので、劇団をやっているって言うと余計に外部の方から「しっかりしてるな」と思ってもらえているみたいですね。
  • 平埜生成

    平埜生成

――今は劇団として、そして個人の俳優としても活動されていますが、これからどういう俳優になりたいと思っていますか?
平埜そうですね、お互いにうまく利用し合える関係になれたらいいというか。 いつも劇団で勉強させてもらっていることを別の現場での仕事に活かして、それをまた劇団に還元できればいいなって思います。
今井大人になったなぁ。
猪塚そういうのを、ウインウインの関係って言うんだよね。
平埜そう!ウインウインの関係になればいいなと思います。
今井個人的には、僕はイケメンではなくブサイク枠の俳優なので(笑)、そこでトップを目指したいという思いはあります。

10周年を機にゼロからのスタート、劇団の生き残りをかけ次なる一手探す

――確かに、40歳くらいになると「オッサン枠がある」ということを、同じアミューズ所属のTEAM NACSの音尾琢真さんが言っていたのを聞いたことがあります。
今井そうなんですよ。続ければ続けるほど、ライバルが減ってくる。 僕の枠には、同じような俳優がそんなにいないので、そのすき間で戦っていこうと思っています。ワンシーンの演技でも目を引くような俳優になりたいですね。
平埜僕は今22歳なんですけど、とりあえず楽しいことを続けていきたいです。どんな役がやりたいとかはまだないんですよね。
今井親みたいな言い方ですけど、最近本当に芝居が楽しいという感覚になってきたみたいで。
平埜昨年、蜷川幸雄さん演出の『ロミオとジュリエット』に出させていただいて、それで人生観が変わったところはありますね。

――猪塚さんはいかがですか?
猪塚僕は今井さんとは逆で、俳優としてはありふれているわけですよ。20代後半でこの風貌の俳優枠は競合だらけなんです。だからこそ、30代に入ってからが勝負みたいなところがあるので、自分の居場所を見つけて、キャラを確立していきたいですね。あと、映像の分野でも欠かせない人材になって、生成も言っていたみたいに、劇団に還元できるような人にならないと!と思っています。

――これからがまさに正念場ということですね。
猪塚そうですね。昔は僕、漠然と「有名になれればいいな」と思っていたんですけど、地球ゴージャス(岸谷五朗、寺脇康文が主催する演劇ユニット)の公演に参加させていただいた時、演技に対する考え方が変わって最近お芝居をするのがすごく楽しいんです。28歳でこの楽しさに気づくのは遅かったかな?って思うところもあるけど、これまでの経験がないとこの感覚にもたどり着けなかったと思うので、これからが勝負だなと思っています。

――8月8日からスタートする『Have a good time?』は、2012年の第4回公演の再演になるんですね。
猪塚そうなんです。以前とは違う、今の自分の演技をやれると思うと嬉しいですね。
今井この作品は、ダンスや歌などいろいろな要素が入っていて、誰が観ても分かりやすくて笑える、劇団プレステージらしさが詰まった作品です。 僕らが作ってきた10年間が詰まった作品でもあるので、今回はこれまで応援してくれたファンの方へのメッセージも込められているんです。
――感謝の意も込められているんですね。リーダーである今井さんは、これから劇団プレステージをどういうものにしていきたいと思っていますか?
今井みんな歳をとってきてしまったので(笑)、そろそろ一気に勝負をかけて、自分たちの良さは残しつつも作品のレベルをさらに上げていかないと、劇団として生き残っていくのは厳しいのが正直なところだと思うんです。来年何を仕掛けていくかがすごく大事だと思うので、ひとまずこの公演を絶対に成功させて、それからまたゼロからスタートするつもりの気持ちでやっていけたらいいなと思っています。

――10周年を迎えて原点回帰という感じですね。
今井そうですね。今とは違う層のお客さんにも、観に来てもらえるようになりたいですね。自分たちの劇団としてもそうですけど、ほかの劇団を巻き込んでみたり、外部と一緒にやってみたりして、舞台自体も盛り上げていけたら良いですね。
(文:西森路代)
【プロフィール】
劇団プレステージ
大手芸能プロダクション・アミューズから旗揚げされた演劇集団。2005年に「Amuse-Prestage project-unit」として発足し、2010年より本格始動。現在20名の俳優が所属、赤字になったら即解散という厳しいルールの元、「より多くの人たちにエンターテインメントを通じて感動を届けたい」という想いを胸に日々活動を続ける。
第10回公演『Have a good time?』
 5人組のC級アイドル「東京オードル」はデビューして10年になる。30代に突入し、メンバーたちがそろそろ潮時かと考え始めた頃、マネージャーのある提案で、彼らは“最後の賭け”に出る……。劇団プレステージ10thアニバーサリーのラストを飾る至極のエンターテインメント。

<大阪公演>
会場:森ノ宮ピロティホール/日程:8月8日(土)〜9日(日)
チケット料金:前売5000円/当日5500円(全席指定席・税込)
<東京公演>
会場:紀伊國屋サザンシアター/日程:8月12日(水)〜23日(日)
チケット料金:前売5000円/当日5500円(全席指定席・税込)
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