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梶浦さんの音楽との最初の出会いを聞いたら、「父が歌う、オペラですね」という予想外の答えが返ってきた。 「父は、商社に務める普通のサラリーマンで、オペラが大好きな人でした。それも鑑賞するだけじゃなくて、自ら朗々と歌うのが趣味という、同居するにはとっても迷惑な人で(笑)。そんな父がドイツ支社に転勤になって、私は物心つかないころから、父とオペラハウスに行き、家では父のオペラを聴いていました。 幼稚園に通いだした頃からピアノを習い始めて、小学校に上がる頃には父の歌の伴奏をしていました。伴奏といっても、和音をとっていただけなんですけど。それが日常でしたから、私も歌とピアノとオペラが好きになっていましたね。そういう家庭環境から、私の音楽のすべてが始まっています」 子供の頃の夢は「オペラ歌手になりたい」。小学校から高校まで合唱部に入っていたというのだから、一本気な性格が伺える。 「誰に聴かせるわけでもなく、家のピアノで伴奏をつけながら歌ったりしていましたね。小学生の頃はドイツに住んでいたこともあって、オペラや歌曲ばかりでしたが、中学生になってからは洋楽のロックやポップスも聴くようになって。その中でもビートルズにハマって、なぜか全曲暗記しようと思ったんですよね。200曲くらいあるんですけど、自分で歌詞カードを作って覚えました。つまり、凝り性なんですよ(笑)」 結果として、オペラ歌手にはならなかった。振り返れば、ターニングポイントは高校卒業の前後にあった。
梶浦さんの「人生グラフ」は高校を卒業するころから大学時代にかけて少し落ち込んでいるが・・・。 「高校の合唱部で、オリジナルの合唱曲を作っていたのですが、最終的には合唱してもらわなければならないわけで、それも30人くらい人を集めなければならなくて。それが大変だったんですよ。友達に“アイスおごるから”といって協力してもらったりして。それにいい加減うんざりしていた時に、バンドに誘われたんです。キーボードやらないかって。当時、女子バンブームだったんですよね。バンドなら5人いればできる、アイス5本で済むぞ!みたいな気軽さで、あっさり方向転換しました。それと・・・、大学に入学する少し前に父が亡くなったというのも大きい。経済的にも余裕がなくなって、大学時代はバイトの鬼でしたね」 アルバイトで学費を稼ぎながら、バンド活動。そして、就職。状況は変わっても、音楽を離れることはなかった。 「途中、人数が減ったりメンバー変わったりもしましたが、大学4年間、就職してからも3年、バンドを続けていました。みんな白い衣装を着て、鈴をシャーンと鳴らしながらステージに出てきてアカペラで一曲歌ってから、ドーンと演奏するとか、ヴィジュアル系に近い感じで、なかなか面白いバンドでした。でも、正直、プロになるつもりはなかったですね」 趣味で音楽を――父のように――続けていこうと思った梶浦さん。しかし、音楽の神様は彼女の才能を見逃さなかった。 「仕事と音楽を両立するには物理的に時間が足りないと思うくらい、音楽が面白くなってきて、音楽をもっとやりたいと思い始めたタイミングで、“デビューしないか?”と、声をかけていただいたんです。もう、20代も後半になっていましたが、なんという巡り合わせなんだろうと思って。母や会社の上司からは“正気か?”と猛反対されましたが、押し切って、会社を辞めました」 1993年、3人組のユニット「See-Saw」として「Swimmer」でデビュー。1995年頃からソロ活動を本格化させ、アニメ―ション、映画、CM、舞台、ゲームなどの音楽を手がけるようになる。2002年には、「See-Saw」でリリースしたアニメ『機動戦士ガンダムSEED』のエンディングテーマ曲「あんなに一緒だったのに」がオリコンウィークリーランキングで初登場5位の大ヒット。OLからサウンドプロデューサーへ。梶浦さんは、華麗なる転身を遂げたのだった。
『アキレスと亀』 監督・脚本・編集:北野武 出演:ビートたけし、樋口可奈子、柳憂怜、麻生久美子 挿入画:北野武 音楽:梶浦由記 2008年/日本 公式HP:http://www.office-kitano.co.jp/akiresu/ (C)2008『アキレスと亀』製作委員会 ■『アキレスと亀』北野武監督インタビュー ( 2008年09月26日)
笑い芸人
NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事/(株)Nal代表取締役
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