爆笑問題の太田光がしばしば笑いのネタにする妻、太田光代さん。今回の取材中にも、「昨夜は、寝室で宇多田ヒカルのアルバムを1曲目から通して、3回も熱唱していました」とサラリ。その間、夫は寝室の外で妻が歌い終わるのをじっと待っていたそうだ。

　「私の熱唱、うるさいんで（笑）。昨夜は、ちょっと考え事をしていて、テンションを上げたかったんですよ。私なりに理由はあるんです」

　傍目には奇天烈に見える行動も、光代さんとっては必然。なぜなら・・・

　「いつも楽しくしていたんですよ」

　そういう光代さんの人生グラフは、どん底からのスタートだった。

　「1才半の頃に、先天性股間関節脱臼であることがわかったんですね。発見が遅かったのでかなり重症で、手術しても普通に歩けるようになるのは難しいと言われていたそうです。それで、治療のためにずっと入院していました。入院中の子供たちが集まるプレイルームの隅っこに、いつもいた記憶があります。ギブスをはめられて、動くこともできなくて。しょっちゅうほかの子におやつを奪われていました。子供にとって、おやつが食べられないって、切実な問題でしょう。だからどん底ですね。3才を過ぎた頃に退院できて、ようやく一般の人たちの『0』にたどりついたという感じ」

　マイナスからスタートした人生グラフは、病気の回復具合とともに上昇。ところが、6才の頃に一度、急降下する。

　「母は結婚しないまま私を産んだのですが、６才の時、母がお見合いをして、ある男性と結婚することになったんです。それが嫌だな〜と思って、母に私がいるだけじゃダメなの？と聞いたら、ダメだってはっきり言われまして・・・。落ち込みましたね。だから、新しい父にもなかなか懐けなかったです」

　立ち直るきっかけは映画だった。

　「ある時、父と２人で映画を見に行くことになったんです。一緒に暮らすようになって、父が悪い人じゃないというのはわかっていたので、『まぁ、映画くらいつき合ってもいいか』といった気分で。それがきっかけで、よく映画を見に行くようになって、気づいたら父のことが大好きになっていました。父はとても優しい人でしたが、物事を斜めに見る鋭さと奥深さがあって。父にはだいぶ影響を受けました」

　小学校高学年になるころには、普通に歩いたり、走ったりできるようになっていた。光代さんの先天性の病気は奇跡的に完治した。

　「生まれつき健康ではなかったとか、父親がいなかったとか、一般的に言えば『マイナス』なことからスタートしましたが、その後だんだん良くなっていくことを、身を持って経験しているので、何事も前向きに、プラス志向になれるんでしょうね。私は落ち込む時はトコトン落ち込んでしまう気性なんですが、立ち直るのも早いんですよ」

　そんな光代さんが、これまでの人生で2番目に深いどん底に陥ったのは17才の夏だった。