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 北野武監督最新作『アキレスと亀』の音楽を手がけた梶浦由記さん。これに限らず、映画・アニメ・ゲーム・舞台・TVなど幅広い音楽プロデュースを手がけ、昨年までに手掛けたCDの総売り上げは300万枚を超える。最近は、ソロアーティストとしてライブ活動を本格化させており、独自の世界観で音楽との絆を深めながら、成長し続けている。Photo:昭樹
音楽が出てくる本と出てこない本がある

 2008年は、梶浦さんにとってビックプロジェクトが目白押し。『アキレスと亀』のサウンドトラックのほか、2006年から続く映画版『真救世主伝説 北斗の拳』第5部が10月11日より公開される。また、劇場版アニメ『空の境界』全7作の音楽を担当しつ、その主題歌プロジェクト「Kalafina」がスタート。また、Sound HorizonのRevo氏とのコラボレーションライブや梶浦由記として、初ライブにも挑戦した。

 さまざまなメディアから発信される梶浦さんの音楽を創造するパワーの源はどこにあるのだろうか?

 「インスピレーションを受け取るのは、絵か本か。音楽や映画、テレビなど音のあるものはダメなんです。音が聴こえてしまうので、曲づくりには適さないんですよ。これから曲を作るぞ〜っていう時には、部屋でろうそくを灯して、画集や好きな作家の本を読みながら、自分をその気にさせるんです。本を読んでいると、音楽が出て来る本があるんですよ。文章にもリズムがありますからね。それと、不可解なのに現実的な、ちょっと不思議なお話からも音楽が浮かんできやすい。例えば・・・、エイミー・ベンダーの短篇小説集『燃えるスカートの少女』とか、チリの女性作家・イザベラ・アジェンデとか。音楽が出てこない本は眠る時に読みます。音楽が出てきちゃうと眠れなくなってしまうから(笑)」

 音楽が出てこない愛読書の一つが、フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンのムーミン・シリーズ。

 「アニメもいいですが、小説もすごく面白いですよ。短編なので読みやすいし、けっこう残酷なんですよね。実は、昔からいいなぁって思ったバンドの6割は北欧か東欧出身で、相性がいいみたいです。ニューエイジとかエレクトリカとか、北欧は面白いことをやっているんですよね。自分の音楽も、どこか北欧のアーティストの影響を受けていると思います。でも、北欧を旅行したことは一度もないんですよ(笑)。行ってみたいかというと、そうでもない。一番好きな場所には行かないほうがいい(笑)。想像しているほうが楽しいというか、自分の中の北欧を守りたいというか。本当の北欧ではない、私にとっての理想郷のような場所ですね」

 音楽が仕事となった今、梶浦さんのオフの趣味は?

 「オフは、音楽を聴いているか、本を読んでいるか、寝ているか(笑)。友達と飲むのも好きですね。あと、果実酒をつくることかな。梅、杏、さくらんぼ、常時10種類は漬かっている。友達が家に遊びに来た時に、振る舞うんです」

続けて行く秘けつは、自分から辞めないこと

 若くして才能を開花させる人もいれば、梶浦さんのようにOL経験を経て、デビューのチャンスをつかむ人もいる。梶浦さんは自身を「遅咲き」と言ったが、その遅かったデビューから早15年のキャリアを積んできた。

 「続けて行くひけつは辞めないこと。年々、自分の中のモチベーションを維持するのが難しくなっていることに気づきました。それさえできれば、何をやっても続けて行ける。そのために、いい音楽を聴いて“負けないぞ”って思ったりして、刺激を受け続けて行くしかないと思っているんです。

 辞めるのは簡単で、いつでも辞められる。才能があっても自分から辞めてしまう人をたくさん見てきました。でも、一度辞めるたら、二度目のチャンスはなかなかこない、ほぼない。だから、私は、今取りかかっているこの一曲を途中で辞めない、あきらめない。つまりは、手を抜かないってことなんですけど、心がけているのはそれだけですね。自分と音楽に対して、誠意を尽くす」

 最後に、今後について聞いた。

 「ここ数年は、仕事場で曲を作って、スタジオでレコーディングの繰り返しだったんですけど、今年、久しぶりにライブ活動を再開したたら、ハマってしまって、楽しくてしかたないんです。自分ひとりで曲を作っている時と、お客様の前で音楽を聴かせる時と、全然違う楽しみがあることに気がついた。ミュージシャンにとっても、音楽の楽しみ方はいろいろある。その発見がうれしい。アマチュア時代はバンドでライブ中心でしたし、もともと歌うのが大好きでしたから。来年は作曲の仕事を自粛して、ライブ活動に精を出したいと考えています。

 そして、私からの言葉は、“自分を動かす”。自分が感動できないことで、人を感動させようなんて、おこがましい。でも、自分の心に響いた曲なら、誰か共感してくれるかもしれないし、誰かの心にも響くかもしれない。他人を動かそうとする前に、自分を動かす。自分が感動できる曲を作ろう、届けようという気持ちを忘れないでやっていきたいです」

作詞・作曲・編曲を手がけるマルチ音楽コンポーザー。2002年、ヴォーカル石川智晶とのユニット「See-Saw」としてリリースしたアニメ『機動戦士ガンダムSEED』のエンディングテーマ「あんなに一緒だったのに」がオリコンウィークリーランキング5位を記録し、一躍その名を馳せることになった。サウンドトラックを手がける時は「梶浦由記」名義で。アーティスト活動は主に「FictionJunction」名義で、様々なヴォーカリストをフィーチャーした形で行っている。劇場アニメーション『空の境界』全7作の音楽を担当し、2007年12月に主題歌プロジェクト「Kalafina」が始動。2008年4月には「梶浦由記」として初のソロライブを実現した。
公式HP:http://www.fictionjunction.com/

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