東京大学駒場キャンパスの裏手。閑静な住宅街の一角に立つ、5階建てビルのガラス越しに、大小さまざまな「BE@RBRICK」が並んでいるのが見える。赤司竜彦さんが起業したメディコム・トイの自社ビルである。

　狭い雑居ビルの一室からスタートした��おもちゃ�≠ﾌ会社は、世界中にコレクターを持つフィギュアを生み出し、10年足らずで自社ビルを構えるまでに成長した。21世紀のジャパニーズドリーム・・・それも過言ではないだろう。

　会社を起してから、赤司竜彦さんの人生グラフは、「この12年間、嘘、偽りなく、その時その時で、120％の力を出し、100点満点を取ってきたつもり」と胸を張る。

　赤司さんが起業するきっかけは何だったのか――。

　「勤めていたシステムコンサルタント会社の経営企画部に在籍しながら新規事業で、「アクション・フィギュア」を作り始めて。もともと玩具に興味があったので、仕事として精一杯務めました。そうこうしているうちに、会社から『もう、独立したら？』と勧められたのが、きっかけですね」

　会社という組織の庇護の下でやったほうがいいのか、雇われではなくすべて自分の責任でやるべきか、いろいろなケースがあると思うのですが、会社を説得するだけの論理的根拠はなかったけれど、やりたいことがあって。その時は成功するとしか思えなくて。だって、誰もやっていないことだったので、やるしかないでしょう。失敗しても死にはしないだろう、てな勢いでした」

　いざ独立しても、赤司さんはあまり変わらなかった。

　 「スタッフを路頭に迷わせてはいけないとは思いましたが、まずは自分が欲しいって思えるものを作る。それだけなんですよ」

　服のシワまでリアルに作り込み、今にも動きだしそうな『ルパン三世』のフィギュアは、ファンの度肝を抜いた。『ウルトラマン』や『仮面ライダー』、『ドラえもん』、『ディズニー』など、特撮、アニメ・コミックを次々とフィギュア化し、“ヒットメーカー”となる。

　「でも、『BE@RBRICK』がここまでヒットするなんて、誰も思わなかったと思いますよ」