【働きビト】Vol.13 演劇界の鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチの作品作りの源泉

 演劇界の鬼才・ケラリーノ・サンドロヴィッチが、テレビ東京系のドラマ『怪奇恋愛作戦』で、連ドラのシリーズ監督に初挑戦。ゲスト参加した『時効警察』(テレビ朝日系)以来、テレビ作品としては実に8年ぶりとなる今作は、“恋愛×怪奇”というKERAワールド全開のナンセンスコメディだ。52歳にして新たな試みに挑んだKERA、長年に渡り第一線で活躍し続けるエネルギーはどこから生まれているのだろうか?

――2年前から温めていた企画ということですが、最初から「ドラマでやってみたい」というお考えだったんですか?
ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)この企画はドラマしかないだろうと思ってました。芝居のアイデアって大体夜中に思いつくんですけど、今回もそうでした。夜中のボーッとした時間って、やっぱり大切ですよね。映像の仕事をそんなに多くやっていないから、ということもあるかもしれませんが、テレビドラマには楽しい思い出しかないんです。決して適当ではなくて、カチッとやっているのに、楽しいことだけで時間が過ぎていく。(撮影が)朝早いこと以外はね(笑)。

――(笑)。テレビと舞台の演出で、変えていることってあるんですか?
KERA舞台は“いろんなことを考えさせること”も入場料の中に含まれていると思っていて。だから、すべてを与えられると「バカにすんな」って気持ちになる人もいると思うんですよ、好みの問題ですけど。でも、テレビは喋ったり、食事をしたり、何かをしながら観る人も多いと思うので、舞台よりは与える情報が多いほうが良いんじゃないかとは考えています。

――なるほど。
KERAあと、僕はテレビを専業にしているわけではないので、門外漢が作る物は、突発的でイビツでいいんじゃないか、テレビ業界的にもね。バラエティに富んでいたほうがいいでしょ? いろいろあったほうが楽しいし。

ドラマ『怪奇恋愛作戦』第1話より (C)「怪奇恋愛作戦」製作委員会

ドラマ『怪奇恋愛作戦』第1話より (C)「怪奇恋愛作戦」製作委員会

――突発的なものを作る難しさというのもあると思いますが。
KERAそこにはキャストの力があるのかなって。もちろん、あまりメジャーではない役者さんでやるお芝居のおもしろさもあるんですけど、でもネームバリューもあって豪華で、脚本を体現してくれる優れた才能の持ち主が演じてくれることで、キャパシティが広がると思うんです。

――そんな中でも、最近は仲村トオルさんとのお仕事が多いように思いますが、仲村さんと一緒にやりたいと思うのはどんなところですか?
KERAまず、図体がデカいって時点でおもしろいじゃないですか(笑)。今回演じてもらった、天然刑事・三階堂登もそうですけど、でくのぼう的な発想ですね。体だけ大きくて何も知らない無能人、という役柄ができたりするのがおもしろい。トオルくんのパブリックイメージにそういう一面がないということも、僕には都合が良いんですよ。

――KERAさんの作品で、仲村さんの新たな一面が開花したことによって、そういうおもしろい役が増えたりしたらどう思われますか?
KERA当たり役とはそういうものなので、おもしろい役のオファーが増えれば成功だって思いますね。(妻の)緒川たまきにしても、今回のドラマで「こんなこともやるんだ」って思ってもらえたら良いなと思いますし、麻生(久美子)だって『時効警察』の頃には、「私は神秘的な女優だったのに!」って言っていたくらいですから。

――先ほど、ドラマは朝早いのが辛いとおっしゃっていましたが、朝方に習慣を変えたりはしなかったんですね。
KERA体が夜型に戻ろうとするんですよ(笑)。朝方の生活の方が(体にも)良いと思って早起きをしてみた時期もあったんですけど、結局は眠くなって昼過ぎに寝ちゃうんです。

――40代を過ぎたクリエイターの方が、鬱っぽい症状に見舞われるケースって結構多いと言われていますが、KERAさんはそういうこともないんですか?
KERAないですね。作品で発散しているからじゃないかな?って思うんですけどね。

――これまで仕事をしてきた中で、ゆっくり休んだ時期ってあるんですか?
KERAない。でも、2015年は4〜7月の期間は、演劇の本番も稽古も映像の現場もないんです。22歳から今までで初めてのことかもしれないです。基本ワーカホリックなんですけど、最近は本を読んだり、映画を観る時間がとれないほど忙しくて。そういうことは今までなかったので、思いきって休むことにしたんです。

――お休みの期間中、映画などを観られるんじゃないかと思いますが、最近はどういう作品に興味がありますか?
KERAハリウッドの大作とか、お涙ちょうだいものとか、自分の嗜好に関係なく一応なんでも観るようにしています。昔から好きなウディ・アレン、コーエン兄弟、ティム・バートン、クリント・イーストウッドの作品とかも観ます。やっぱり、昔の映画がおもしろいですよね。以前は、ジョン・カサヴェテスやルイス・ブニュエルとかの映画をフィルモグラフィー(作品の年代)通りに観たりとかしていましたけど、最近は本当にできていなかったですね。

――昔と今で自分が変わったなと思うところってあります?
KERA昔は元気だったなと(笑)。好きなことができるなら寝なくても平気だったんですよね。23歳の時に所属していたレコード会社の先輩に、チェッカーズがいたんですけど、彼らは仕事が忙しいはずなのにプライベートも充実させていて。「どうなっているの?」って聞いたら「寝てない」って答えが返ってきて。だから、僕もその頃はチェッカーズのマネをして、寝る時間を考えないでスケジュールを組んでいたんです(笑)。

――ワーカホリックな体質は、チェッカーズさんの存在がひとつのきっかけとしてあったんですね(笑)。では、これまで仕事をやってきた中で、これがあったから続けられたということはありますか?
KERA中学生くらいまでの蓄積は大きいと思います。4歳くらいから本を読み始めて、小学4年からチャールズ・チャップリンやバスター・キートン、ハロルド・ロイドといった喜劇王の作品を観るようになった。小学5年で8ミリ映画を撮り始めて、中学1年の頃には上映会を開いていました。その代わり、友だちとキャッチボールをすることも家族と旅行に行くこともなかったけど、その時間で映画や本に触れてきた。偏っていたけれど、その時の蓄積でものを発信してきたと思うんですよ。
【プロフィール】
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
1963年1月3日生まれ/東京都出身。99年に「フローズン・ビーチ」で第43回岸田國士戯曲賞を受賞して以来、数々の演劇賞に輝く。主宰する劇団・ナイロン100℃をはじめ、KERA・MAPやオリガト・プラスティコなどのユニット、外部プロデュース公演への参加も積極的に行っている。また、劇作家、演出家のほか、映画監督、音楽家としても存在感を発揮。幅広いフィールドで活躍している。
  • (C)「怪奇恋愛作戦」製作委員会

    (C)「怪奇恋愛作戦」製作委員会

ドラマ24『怪奇恋愛作戦』(テレビ東京系)
脚本・監督・音楽:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:麻生久美子、坂井真紀、緒川たまき、仲村トオル、
犬山イヌコ、池谷のぶえ、大倉孝二ほか
放送:1月9日(金)〜毎週金曜深夜0時12分放送
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/kaiki/(外部リンク)

【Story】
2話1テーマの“怪奇×恋愛”ドラマ。婚期を逃した愉快なアラフォー3人娘・夏美(麻生久美子)、秋子(坂井真紀)、冬(緒川たまき)が、恋に仕事に友情に。また、恐ろしい妖怪や謎の怪奇現象との闘いに、遅すぎた青春を燃やすホラーラブコメディ。果たして3人に春は訪れるのか……
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