【働きビト】Vol.07 年下上司と年上の部下…ストレスフリーで過ごすコツ

 俳優・佐藤健主演の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』が14日に公開され、好発進を切っている。そこで、ORICON STYLEでは、メガホンを執った小泉徳宏監督(33)と音楽プロデューサーを務めた亀田誠治氏(49)をインタビュー。親しみやすい人柄で軽快なトークを繰り広げる音楽界の重鎮・亀田Pの隣で、ニコニコと聞き入る若き俊英・小泉監督。年齢やキャリアの差が巧く作用していく、年功序列を感じさせない仕事のススメ方とは?

―― 今回は、監督から亀田さんへのオファーだったのでしょうか?
【小泉】 同時進行でした。僕がお話をいただいたときに、音楽に亀田さんのお名前が既に上がっていて、監督としての意見を求められました。主人公の秋と同じく、亀田さんもベーシストでいらっしゃる。この方しかいないと、「納得」という想いしかなかったです。
―― 亀田さんは主題歌1曲をプロデュースというレベルに留まらず、オリジナル7曲を書きおろし! 並々ならぬ思いがあったということでしょうか?

亀田これがですね…掘っても、掘っても、作曲する音楽が次から次へと出てくるんです!
小泉脚本が未完成の段階で、すでに亀田さんに曲作りのお願いを始めていたんです。最終的に何曲お願いすることになるか未知数でした(汗)。
亀田会議の度に、土屋(健)プロデューサーと小泉監督が、なんとなく“モゾモゾ”しているんです。そこで「ここはもう1曲、欲しいですよねぇ・・・」って2人の会話が始まったら、僕は「じゃあ、作りましょう!」と言うしかない(笑)。
小泉脚本が変更される度に、曲が加算されていくっていう…。
亀田会議室に漂う“モゾモゾしている空気”の理由は、コレか〜みたいなね!
小泉亀田(視線を合わせて、爆笑)

―― 漫画から実写化へ。原作にない「音」を表現するのに、困難だった点は?
亀田この作品は、劇中に登場するバンドやアーティストの方向性を決めるまでに、すごく時間を掛けました。漫画は目から入る絵という情報からイメージが膨らんでいくけど、映画は耳から入る音という情報からイメージが膨らんでいくから。
小泉1日4時間ぐらいの会議が毎週ありましたね。
亀田ある日、監督が「ご飯でも行きませんか?」と誘ってくれたんです。会議室じゃない、色んな人の意見が飛び交わない場所で、2人で話をしましょうって。
小泉そうです! お声掛けしました!!
亀田そこで“クリプレ”(三浦翔平率いる劇中バンド・CRUDE PLAY)の音楽性や曲のエッジ感など、監督がとても丁寧にイメージを伝えてくださった。あの食事会で、1つ扉を打ち破りましたね。
  • Profile (左)映画監督・小泉徳宏…06年に映画『タイヨウのうた』でデビューロボット所属。(右)音楽プロデューサー・亀田誠治…椎名林檎を始め、数々のアーティストをプロデュース。

    Profile (左)映画監督・小泉徳宏…06年に映画『タイヨウのうた』でデビューロボット所属。(右)音楽プロデューサー・亀田誠治…椎名林檎を始め、数々のアーティストをプロデュース。

―― 亀田さんからではなく、小泉監督からというのがポイントですよね。映画では「監督=総指揮官」ですが、キャリアでは亀田さんの方が上。意見交換で工夫された点などは?
小泉大先輩ですからね。
亀田そこは僕の持ち前の「フレンドリーさ」でカバーしました!
小泉もしも相手が「年下の意見なんか聞き入れない」とか、すぐに「俺の音楽はそうじゃねぇ」とか、そう言う方だったら、ご飯に誘うこともなかったです(笑)。直接話そうとも、しなかったかも。
亀田アハハッ! そんな気持ちは全くなかったです。何よりも監督のイメージが映画全体を動かす鍵ですから。
小泉映画と音楽が乖離(かいり)せず、作品のなかで映像、セリフ、音楽がシンクロできたのは、亀田さんとだったからです。
亀田僕としては、映画の音楽プロデューサーを務めるなかで、全曲の歌詞も書いて、メロディーも作って、サウンドも作ってと、ここまで深く関わった作品は初めてといえるのかも。つまり僕もビギナーなわけです。だからこそ、キャリアや年齢に捉われず、1つのチームになろうと。トライ&エラーを繰り返すなかで、僕も監督を頼ってついて行ったんですよ。
小泉周りからみれば「どういうパワーバランス?」と不思議がられるかもしれませんが、亀田さんがこういうお人柄でいてくださったので、僕は素直にモノ作りができたと思っています。
―― 亀田Pから観て、音楽業界の裏側を描くことに戸惑いはありませんでしたか??
亀田全くありませんでした。コミックで描かれている音楽業界と実際の音楽業界の両方を分かりやすく描いている映画になったと思います。

―― 音楽は「お金にならなければ、意味がない」という表現もありましたが。
亀田お金になるならないではなく、どれだけ多くの人に感動を与えているかという事を僕は重視しています。
―― 完成した劇中歌はジャンルも様々ですが、一番苦労された楽曲は?
小泉“ちっぽけ”ですよね〜。(※秋と理子の想いが交錯するバラード「ちっぽけな愛のうた」)
亀田これはクランクインしてから出来上がった曲なんですけど、実は最後のピースをはめてくれたのが、健君でしたね。
小泉そういえますよね。
亀田3回ぐらい緊急ミーティングが開かれて。健君自身も参加して、「僕は演じる中で、こういう気持ちを感じた」というサジェスチョンもあって。僕と監督と健くんとで作り上げた感じかな。

―― 役者さんたちの体温がどんどん上がっていく作品は、本当に幸せですよね。
小泉そうですね。僕は積極的に役者陣の意見も聞くべきだと思っているタイプだったので、いい雰囲気のまま3人が円陣を組めました。
亀田僕にとっても「ヒントくれてありがとう!」って。
小泉もし、僕がすっごい年配の大ベテランと言われるような監督だったり、亀田さんのこういうお人柄がなければ、きっとありえなかったことでしょうね。
―― 今回の現場で、小泉監督にとっての新発見といった出来事はありましたか?
小泉映画業界と音楽業界の違いを感じたのが「仕事の雰囲気が、似ているようで、全然違う」という点でしょうか。僕には、音楽の方がクリエイティブに感じました。
亀田えッーーー!!
小泉自分の持ち場や担当など、そういう垣根を越えて、すごくラフに意見交換がされているなと。映画の現場は、どこか“餅は餅屋”というか、それぞれの役回りが独立していて、目には見えない妙な敷居がある気がします。
亀田意外だなぁ。
小泉例えば、映画業界では「俳優が口を出さない事」が美徳とされる、古い慣習のような空気があります。だから、健君も最初は「ちょっと意見を聞いていただいても、いいですか?」と、すごく遠慮がちにアプローチしてくれたんですよね。
亀田うーん。音楽業界でも、現場によってはあるのかも。
小泉きっとそうですよね(笑)。ただ、ココだけ(亀田さんの周囲を指さしながら)なのかもしれないですけど、一切感じませんでした。
亀田アハハッ。僕がプロデューサーとして立ち会う現場は、個性的で自己主張の強いアーティストたちばかりだし、常に意見はウェルカム。様々な意見が飛び交うからこそ、思いもよらないアイデアが出てきて、素晴らしいものが出来るって分かっているから(笑)。
―― モノ造りの現場でも、ジャンルが違うと印象もずいぶん変わりますね。
小泉映画業界が「堅苦しい」なんて言っちゃったら、若者が門戸を叩く時に、ためらいが生まれませんかね?
亀田いやいや、大丈夫! 記事には「小泉監督が、古い慣習なんてぶっ潰していきます!」と、言っていたということにしましょう(笑)。
小泉なんか突然キャラ変わっちゃってるじゃないですかそれ〜(笑)。


 この後、2人はそろって撮影へ。「また飯行きましょう」と小泉監督が声をかけると、亀田氏も「焼き肉にしましょう!」と2つ返事でOK。終始笑いが絶えないやり取りが続いた。お互いにキャリアの差、年齢差をしっかりと受け止め、だからこそ尊敬しあえる“パートナーシップ”が垣間見られた今回の対談。口をそろえて「勉強になりました」との感想が漏れるなど、仕事への充実ぶりが伺えた。
  • (c)2013 青木琴美・小学館/「カノジョは嘘を愛しすぎてる」 製作委員会

    (c)2013 青木琴美・小学館/「カノジョは嘘を愛しすぎてる」 製作委員会

映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』
出演:佐藤健、三浦翔平、大原櫻子 ほか
監督:小泉徳宏/音楽プロデューサー:亀田誠治
原作:「カノジョは嘘を愛しすぎてる」
(著・青木琴美 小学館「Cheese!」連載)
http://kanouso-movie.com(外部リンク)
オリコン日本顧客満足度ランキングの調査方法について

当サイトで公開されている情報(文字、写真、イラスト、画像データ等)及びこれらの配置・編集および構造などについての著作権は株式会社oricon MEに帰属しております。これらの情報を権利者の許可なく無断転載・複製などの二次利用を行うことは固く禁じております。