【働きビト】Vol.03 ピクサー/ディズニー作をヒットに導く吹替の現場! 映像翻訳・杉田朋子
「昔の海外ドラマなどを観ていると、すごく自由だな〜って思います。全然言ってないことをどんどん言わせたり、元のキャラクターからずいぶん変貌を遂げていたり(笑)。今だと考えられないですね」と、原作に対してより忠実で正確な翻訳が求められているようだ。
一方、翻訳の際に最も苦労するシーンについては「歌です」と即答。「英語は1つの音符に1つの単語が載りますけど、日本語は1音に1文字。台詞と比べてさらに日本語の入る量が少なくなります。そして音楽に合わせ、リズムよく歌詞を訳すという…もう、どうやってこの内容を盛り込もうかと(笑)。本当に悩みどころですよ」とトホホな笑いを浮かべた。
今回の『〜ユニバーシティ』でも、前回の『〜インク』に続いて歌のシーンは登場する。しかも、『ユニバーシティ』だけあって、今回は校歌だ。「劇中の短いシーンと、別のフルバージョンの収録もあったんですけど、これがまた非常に難しくて(笑)。校歌らしい歌詞を考えつつ、でも古過ぎる言葉遣いを盛り込むことも避けたい。悩みましたね」。
推理ドラマ、恋愛ものなど多ジャンルの作品を受け持つなかで、好きなジャンルは「人間ドラマ」という杉田氏。「このモンスターズでも、マイクの前向きさや健気さ、サリーと一緒に困難を乗り越える様子は人間ドラマに通じるところがって、翻訳をしながら感動しちゃうんです。台詞の掛け合いも本当に面白くて、お仕事とはいえ心から楽しませてもらっています」。
「この仕事を始めて5年目ぐらいの時に、吹き替えの翻訳で長さを合わせることができなくなった時期がありました」と、当時を思い返す。「最初の頃は台詞を詰め込み過ぎていたみたいで、どんどん長くなっていたんです。そこで、一度“長い”と注意を受けたんですけど、そうすると今度は削っても削っても『これじゃ長い』、『まだ長い』と…自分で尺を計れなくなりました」と、徐々に負のループへとはまり込んだようだ。
「当時はいろんな方から助言をいただきつつ、徐々に勘を取り戻していったと思うんですけど…時間は掛かったと思います。『どんなに良い台詞でも、長さが合ってなかったらダメだからね』って、もう何度も言われちゃいましたから」と、今だから笑って話せる苦く、かつ貴重な経験を話してくれた。
「翻訳は『言葉』を扱う仕事です。でも、時代ごとに同じ日本語でもどんどん使い方や意味が変わっていくなかで、流行すたりに流されてはいけない。でも、翻訳の中で使う、使わないは別にして、世間の流れを知っておくことはとても大切です。常にいろいろな場面で、勉強は続きます」。
【プロフィール】
杉田朋子(TOMOKO SUGITA)
(株)東北新社 外画制作事業部 翻訳室 主任。代表作は劇場吹替『モンスターズ・インク』、海外ドラマ『ホワイトカラー』『アグリー・ベティ』など多数。
杉田朋子(TOMOKO SUGITA)
(株)東北新社 外画制作事業部 翻訳室 主任。代表作は劇場吹替『モンスターズ・インク』、海外ドラマ『ホワイトカラー』『アグリー・ベティ』など多数。
【Story】サリーとマイクの、大学生時代を描いた同作。二人の出会いやクラスメイトとのケンカ、仲間たちの熱い絆を描いた青春グラフィティ。幼い頃のキュートなマイクも必見!
監督:ダン・スキャンロン/製作総指揮:ジョン・ラセター
字幕版声優:ビリー・クリスタル/ジョン・グッドマン 他
日本語吹替え版声優:田中裕二/石塚英彦 他
■公式HP:http://Disney.jp/monsters(外部リンク)