【後編】仲は良くても“仲良し”じゃない!嬉野Dにとって“ どうでしょう班”の絆とは

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嬉野氏、初の単独エッセイ『ひらあまり』(KADOKAWA刊/7月17日発売)

 俳優・大泉洋を人気者へと押し上げたバラエティ『水曜どうでしょう』の、嬉野雅道ディクレクターが、今月17日に初の単独著書『ひらあやまり』(KADOKAWA刊)を発売する。そこで、嬉野氏がORICON STYLEのインタビューで語る“どうでしょう流お仕事論”とは?

■大泉洋は最年少扱い!? 普遍的な関係性を保つ『どうでしょう班』

―― 放送から20年を経てもなお、全国で再放送され笑える魅力は、計算なしの全力投球だからですね。

【嬉野】 4人が4人、おもしろくするために必死だったと思いますよ(笑)。でも、なぜあの番組が当たったのか、その方法論は思いつかないですよね。ただ、一貫して「コレ」と思えるのは、僕らは現場で自分の気持ちに嘘をついてはいないってことかな。だって本当に楽しいとき意外は、笑ってないものね。だから、現場で自分に嘘をつかないことと、みんなが現場で面白い方に転がそうと必死っていうこと。この2つは最低要素なんじゃないかな。

―― 放送開始から長い時間を経て、今のみなさんの関係性に変化はありますか?

【嬉野】 どうだろうね。『どうでしょう』を離れてそれぞれの身の上が変わってきて大泉君は今ではスターだけど、僕らの中ではいつまでも若手だもんね。人って出会った時の関係性が変えられないから、4人の立ち位置って変わらないのよ。大泉君、いまだに大学生扱い、気の毒だよね(笑)。

 でも、我々は、仲はいいけど“仲良しグループ”ではないから、『どうでしょう』というテーブルの上では笑顔を浮かべてるけど、足元では蹴り合ってたときもあったかもね(笑)。それでも、必死で4人一緒にいようとしたと思う。だって当時の僕らには、このテーブルにしか可能性がなかったから。でも、それはいまも変わらなくて、僕らはココを離れるわけにはいかないと思うんだよね。だって、どんなに外で活躍しても全てはこのテーブルから始まったこと、そのことに変わりはなくて、だから『水曜どうでしょう』は、僕らにとって生涯失うわけにはいかないものですよね。

■どうでしょう魂ここにあり!? 大人になることは「楽しいことを続けること」

―― 著書の中では、同番組でこそ「大人になった瞬間があった」と書かれていますね。

【嬉野】 大人になるということは、子ども時代が終わることって思ってましたから。これからは自分が認められるように頑張って我慢して仕事して…そんな厳しい世界に来たんだって自覚することだと勝手に思いこんでいたと思う。そんな風に苦しさの中に身を置いて生きる事という“大人像”を、誰に頼まれたわけもないのにじーっと凝視していたように思うのね。

 だけど、番組を作っていく中で、自分たちの思いつきが、視聴者に受けて、そしたらさ、自分たちがおもしろいと思うことを同じように面白がってくれる、視聴者という他人がいてくれるという発見あったの。そしたら、番組作りは仕事だから、自分たちが楽しいと思えることが仕事になって毎月給料をもらいながら、これをずっとやっていけるんだったら、人生って楽しいままってことになるじゃないって思ったの(笑)。「大人=苦しい」という思い込みこそが間違いで、死ぬまで楽しくやっていけるって道もあるじゃんって。なら、楽しく生きる、それが生き物本来の姿かもしれないじゃない、なんかそんな風に自覚できたんだね。

■就業中に会議室で“カフェはじめました” その真意とは?

―― すごく、すごく素敵だと思います。でも、会社員として「自由に楽しく行きます」と宣言することは…なかなか、怖いです。

 そうだよね。僕だって、会社にお給料をもらって生きてるんだから、社会で会社を離れてひとりで生きていく自信がなければ、自分は社会の前で無力だってことを思い知らされるよね。でも、それでもやっぱり僕は自分の判断を信じているから、無力さを実感しても「それでも僕は負けない」って思うの。

 僕は“自分は温室育ち”だと思うからそう公言してるけど、それも世間一般の概念を持った人からは、眉をひそめられる宣言だよね。でも、平気でそんなことを言ってるおっさんにね、どっか遠くにいる誰かが、なかなか声高に言えなかった本音の部分で、共鳴する瞬間だってあると思うんだよね。

 僕は最近、会社で就業時間中にもかかわらず、会議室の入り口に「カフェはじめました」って書いたA4用紙一枚の看板を張りだして、コーヒー淹れてる。それってどっからどう見たって、仕事なんかしてないわけです(笑)。でも、そんなことを会社でした方がいいんじゃないかなって思ったんだね。

 会社の中にカフェという気の抜けた場所をつくったことを、みんながどう受け取るのか知らないけど・・・でも、寒い冬にさ、誰も表に出てこないけど、垣根の曲がり角でたき火をたいて、芋焼いて、煙を上げていたら、消防車くる時代かもしれないけど(笑)、だけど遠くの人が「あ! あそこで煙があがってるな〜」って、気づくかもしれない。あの人、何してるんだろうって気になるかもしれない。一人二人でもたき火にあたる人が出てくれば、自分も行ってみようかと思うこともあるかもしれない。だから(カフェを)実行に移した。

 もちろん会社から特別な許可をもらってるわけじゃないよ。総務に許可も得ずに勝手にやってる。でも、HTBには、確かにそれを黙認する許容量があるよね。だって、まだ怒られてないもん(笑)。でも、『どうでしょう』(DVD)の売れ行きが下がれば、上司がすっ飛んでくるのかもしれないけどね(爆笑)。

 今回の本では、今までの自分の価値観や、自分にとっての幸せについてを綴ったの。書いてるうちに幸せの話になってきた、半世紀生きてきたおっさんの“意思表明のような一冊”。これでも、割にひどい目に遭ってるおっさんが書いた「それでも僕は負けない」って一冊だと思うから、ひどい目に遭っている人が読んでくれても、共感できるかもしれないね(笑)。

著書『ひらあやまり』(KADOKAWA刊)は7月17日発売。嬉野Dのテレビマン人生を変えた『水曜どうでしょう』の秘話に、ギャラクシー賞をはじめ、数々のドラマ賞を受賞したスペシャルドラマ『ミエルヒ』の裏側。そして、すべての肩書きを除いた50代男のささやかな日常に隠れた、小さなドラマを集めたエッセイ集となっている。

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