Vol.04 いとうせいこうに学ぶ!笑いが生み出す“ポジティブ処世術”いとうせいこう(SEIKOU ITOU) 東京・上野、浅草を拠点にした映画祭『第6回したまちコメディ映画祭in台東』が、今年も9月13日から16日まで開催される。総合プロデューサーは発起人であるいとうせいこう。今回の転職サイト「ORICON STYLE “Career”」では、作家、文化人、タレントにミュージシャンなど幅広い肩書きを持ついとうに、仕事の楽しみ方をインタビュー。各ジャンルで人の記憶に刻まれる作品を残してきた、いとうの仕事へのこだわりと処世術、そして原点であり原動力でもある“笑い”について伺った。 就活で知った“超”挫折「なんで俺を認めないのか…」いとうは大学時代からピン芸人として活躍し、大学卒業後は出版社に入社して雑誌編集者としてそのキャリアをスタート。若い男性のバイブルともなった雑誌『ホットドッグ・プレス』(講談社)でヒット企画を生み出してから、その後芸能界へと道を絞った。一見、順風満帆にみえる職務経歴書だが、もとはテレビ局への入社を希望するも、ことごとく不合格通知を受け取っていたというから驚きだ。 ―― せいこうさんの職歴に「会社員時代がある」ことがとても不思議です。 でも、一般企業じゃなくて出版社の編集部だからね。当時の僕はピン芸人として活動していて、しかも結構ウケていた。なのに、テレビ局は全部落ちてしまった。「こんなに他人は自分を認めてくれないのか・・・」と落ち込んでさ。あの時に「なんで、俺を認めないのか?」という“超”挫折を知りました。いま思い返せば天狗だったんだろうね。 その時に大学の掲示板で見かけたのが出版社の採用募集で、応募のお題は「今、自分がハッとすることを書け」だった。僕はその“ハッとすること”が書きたくて応募したんだよね。テレビ局の面接では、入社したい一心だからソコソコのことしか言えなかったけど、出版社に関しては受かりたいなんて気持ちはゼロだから、面接の場でも少しぐらい枠を外れたって面白いことが言えちゃう。そりゃ、テレビは落ちるし、出版社は受かるよね。 実際の編集の仕事は「編集会議で何を発言できるか?」っていう企画力がすべてだった。そこで新入社員の僕は『読者ページが面白くないんで、僕にやらせてください』って立候補したの。そこからナンシー関(故人)さん達がブレイクしていって、ページもどんどん面白くなってさ。新人がディレクションできるコーナーを持てるなんて、雑誌だからこそ。僕には合っていたんだろうね。 これがテレビの新人ADだったら、どんなに短いワンコーナーでも担当できるまで数年かかる。その間に、僕は人のやり方を押し付けられて、嫌になって辞めていたと思うんだよね。そう考えるとあの時出版社に履歴書を送ったっていう運の良さかもしれないし、ポジティブな出来事だって僕は捉えている。 前向き思考の原動力は“笑い” 「愚痴(グチ)を言うなら笑える悪口(グチ)」―― 人生初の大きな挫折さえも「いい転機になったと」と言い切ってしまうポジティブさはステキです!普段から、物事を否定したりされないのでしょうか? 否定しても、何も始まらないんだよね。だから、僕の場合は『嫌いなものとは一切かかわらない』。その物事、人物の名前さえ言いたくない。みんなは「いとうは人の悪口を言わないね」って思っているかもしれないけど、僕には“死ぬまでこの人の名前を口にしない”って決めちゃっている人もいるぐらいだから。声に出すのも嫌だし、言ったそばから自分に伝染するみたいな気がしちゃう。 ただ、批評はいいんですよ。鋭い批評は本質を現わすから。だから、愚痴(グチ)を言うなら悪口(グチ)を言います。思い切り痛快なヤツを、相手がどんな上の人でも、他人の見ている前でズバッとね。周りはケンカかな?ってヒヤヒヤしつつも、本質を射抜きすぎて、思わず吹き出しちゃう。そういう悪口を言うのはむしろ好きだね。アハハッ。 ―― せいこうさんの仕事の姿勢や、その前向きな思考の原点は「笑い」ですか? うん、それは確実にありますね。本当に笑えることはもちろんだけど、逆に「まぁしょーがないかぁ」という笑いも自分を救ってくれるし…自分にとって“笑い”はすごく大きいですね。これで単なる真面目だったら、きっとやってられないもん(笑)。 愚痴なんか言うより、偶然見つけた素敵なアルバムやバンドの話をする方が絶対いい。そうすることで、僕から出てくる言葉は自然とポジティブな言葉や話が多くなる。それを聞いて、周囲は「いとうってポジティブな人だ」と受け止めてくれる。これは僕にとっても、周りの人にとっても、すごく良いことだよね。
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