1993年にタイタンを設立。思いがけず社長になった光代さんだったが、その英断に間違いはなかった。再スタートを切った爆笑問題の人気が復活するのに、時間はかからなかった。ほかにもタレント長井秀和や橋下徹弁護士（当時）ら売れっ子を抱える芸能事務所に成長していった。 しかし、37才を過ぎたあたりから光代さんの体に、ある変化が生じ始めた。

　「どんなに忙しく働いていても、精神的なストレスがあっても、若さがカバーしてくれていた。それが、ガクッ〜と来ましたね〜。体力的にきつくなってきて、精神的にも落ち込んでしまって。そんな状態から抜け出すヒントを与えてくれたのが、ハーブやアロマだったんです」

　「いいな〜と思ったものは人に薦めたくなる性分」という光代さんは、2003年にハーブ専門店「ウィッチムーン」をオープンする。タイタン設立からちょうど10周年で、事務所経営を軌道に乗せ、好きなハーブの店を持つ。絵に書いたようなサクセスストーリーだ。

　「そんなことありません。私の場合は、夢を抱いても叶わない。それを、若い頃に悟っていた。医者にもなれなかったし、専業主婦にもなっていない（笑）。その時、その時、やらなきゃいけないことをやっていたら、予想もしなかった方向に転がっていた。だからといって不本意な人生だとは思っていません。今、振り返って思うのは、ただ夢を見ているより、目の前の現実に取り組んで行くことのほうが、最終的に夢に近づけるのかもしれないな〜、ということ。芸能事務所の社長になっていなかったら、ハーブに興味を持たなかったかもしれないし、会社の部屋の中に飾った花に癒されることもなかったかもしれない。昨年、南青山に開いたフラワーショップも全部つながっているな〜って。逆に、夢に向かって計画的なら今のようになっていないはず（笑）」

　2007年9月には、地下鉄青山一丁目駅近くの一等地にフラワーショップ「アリエル」もオープンさせた。「ハーブとお花で忙しい毎日に心和むひとときをお届けできれば」と話す。そして、来年1月には、新百合ヶ丘（神奈川県川崎市）に、3年越しで準備した心のケア施設を開設する。
　医者になりたかった夢は少し形を変えて結実するのかもしれない。

　「アメリカでは日ごろの自己管理のために上手にカウンセリングを利用していますが、日本では誰もが気軽にカウンセリングを受ける環境にはありませんよね。まだまだネガティブイメージもあるし、施設も足りない。私は以前からカウンセリングを利用していて、これもハーブと同じで、もっとみんな利用したらいいのにと、常々思っていた。誰でも気軽に通える心のケア施設を作ったら、みんなに喜んでもらえるんじゃないかと思って」

　光代さんが色紙に書いたモットーは「嬉しくしたい。楽しくしていたい」。しかし、人はひとりでは生きていけない。家族、友人、仕事相手・・・、さまざまな人とのコミュニケーションによって、物事は動いていく。だからこそ、自分以外の他人が喜んでくれたり、楽しんでくれたりすることを考える。

　「確かに、笑っていたり、楽しそうにしている人を見るのが好きですね。でも、人の役に立ちたいとか、人のためになるからとか、そういうことはあんまり考えていません。ボランティア精神とも違います。きちっと、それなりの対価はいただきますよ（笑）」

　心療内科の次のプランも決まっている。レストランシアター。それは夢ではなく、「目標」と光代さんは言う。彼女は本を出すほど料理好きだ。確かにつながっている。 　

　「父と見た映画の中で、レストランシアターが出てくる作品あった。そこでコメディアンが芸をしていた。そのシーンを思い浮かべて、レストランシアターの経営者になりたいと思ったことがあって、それを最終目標にしているんですよ。漠然と思ったことがなんとなく形になってきている。形にしようとするんですかね。ハーブショップも花屋も併設したレストランシアターで、お笑いの日があったり、ジャズの日があったり。その2階にはクリニックがあって・・・、とすべてが一体化したら大人が楽になれる場所になるんじゃないかしら。さすがに今すぐとはいわないけれど、10年後くらいに実現できると思っているんです」