KONISHIKIの人生グラフ、最大の落ち込みは1986年5月、大関昇進をかけた夏場所。そこで不運が襲う。8日目の北尾との取り組みで全治2ヶ月と診断される大ケガを負ってしまったのだ。この時の右ひざのケガは結果的に完治することなく、その後の土俵生活に影を落とすことになるのだが・・・、当時の小錦はケガに屈することはなかった。

1987年の5月場所で、外国出身力士として史上初めての念願の大関昇進を果たしたのだ。ケガによる地獄を見た後だけに、人生グラフはMAXに急上昇。さらに、1989年９月場所では涙の初優勝を飾り、��見山に次いで史上2人目の外国出身の優勝力士となった。

　「生まれたときから厳しい両親に育てられ、いいことも悪いことも若いうちに経験したことで、さまざまな苦難を乗り越える気持ちになれたんだと思う。

　誰だって、努力しないと成功しない。これ、当たり前。でも、努力したからといってすべて思い通りにはならない。とくに、スポーツ界や芸能界は将来が読めないよね。いや、サラリーマンお同じかな？自分がしっかりしないと、いつ会社が潰れるかわからない時代だからね。

　だから、何が起きても、いつでも動けるようにしておくことが大事。いつまでも同じ位置にいられない。変わっていくものなんだ」

　右足首、右肩、首、右ひざ、左ひざ・・・小錦は身体にいくつもの故障を抱えながら相撲を取り続けた。しかし、度重なるケガの影響で、好不調の波が大きくなり、大相撲史上最重量のその身体が最大の負担となっていった。カド番を何度もしのぎながら、1993年11月場所を最後に、在位39場所で大関から陥落。以後、繰り返し「引退か！？」と話題になりながらも、相撲をあきらめることはなかった。

　1997年11月、15年に渡る土俵生活に終止符を打った。引退会見では、「夢はひとつ、横綱になることだけだった。自信もあった。しかし、一生懸命やったから悔いはありません。立ち向かっていく気持ちが大事。僕は最初から土俵に上がったら自分が一番強い、と思って取ってきた」と語った小錦。引退後は年寄佐ノ山として高砂部屋で、後進の指導に当たっていたが、1998年９月、日本相撲協会を退職。角界から完全に離れる。

　「自分はすごく恵まれていたと思うよ。協会には感謝しているし、引退後もテレビやCMへ出演させてもらったり、講演、ボランティアなどで各地を回ってみんなに歓迎された。それもすべて相撲のおかげだと今も思っているよ」

　協会を辞めた理由のひとつに、1996年から個人的に続けているボランティア活動をより充実させたいという思いがあった。

　それは、KONISHIKIキッズ基金。ハワイの子供たちに夢を叶えるチャンスを与えられるように、主に学校教育に対する支援を行っているものだ。

「ハワイで過ごした少年時代のこと、日本の相撲界で過ごした日々のこと、そして今の生活・・・、自分が経験したすべてのことと比較しながら、ハワイの子供たちに必要なこと考えていきたい。自分に何ができるか、どうやってメッセージ届けたらいいのか、いつも考えているよ。

　 そこで、ひとつ大きなパワーを持っているのが音楽だと思う。音楽にできることたくさんあると思う。

　例えば、Mr.Childrenの桜井和寿さんや小林武史さんが中心になってやっている『ap bank fes』。素晴らしいイベントだと思う。何万人もの人を集めて、メッセージを発信しているでしょう。

　日本ではハワイといえばフラのイメージが強いから、ハワイの音楽というとハワイアンしかないと思っている人が多いと思うけど、ハワイのポップス、ハワイのヒップホップ、ハワイのレゲエがあるんだよ。それをH−POPとして、日本の人たちにも広く知ってもらいたいと思っているんだ。みんな聴いたらびっくりするはず。

　前にも言った通り、ハワイで音楽を楽しむのは当たり前だから、ジャック・ジョンソンをはじめ、レベルの高いミュージシャンがたくさんいるんだ。彼らを集めて、ハワイ味のフェスティバルでメッセージを届けられたらいいね。

　まあ、H−POPについては、ＦＭヨコハマのレギュラー番組『KONY ISLAND』（日曜正午）を聴いてもらうとよくわかるよ。

　自分が考えたこと、やりたいことすぐやっちゃうタイプ。まだまだ、やりたいことがいっぱいあるんだ」