2010年08月08日 10時00分

劇作家・後藤ひろひと、“踊る”本広監督と初タッグを示唆

クリスマスを舞台にした新作『スリー・ベルズ』  [拡大する]

クリスマスを舞台にした新作『スリー・ベルズ』 

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 映画『パコと魔法の絵本』の原作を手掛けたことでも知られる、通称“大王”こと劇作家・後藤ひろひとが、今月10日(火)から東京・渋谷パルコ劇場でスタートする舞台『スリー・ベルズ』の公演を控え、ORICON STYLEの取材に応じた。舞台だけでなく実際に映画も「撮ってみたい」と目を輝かせ、『踊る大捜査線』シリーズで知られる監督・本広克行とは旧知の仲とあり、初タッグを組んで「そろそろ一緒に何かやろうか」との話があるとポロリ。新作への期待をほのめかした。

■ダークホースは“ウーイェイよしたか” パルコ劇場が揺れる!?

 本作はクリスマスの夜に起こる3つの奇跡をオムニバス形式で展開する感動作。ミステリーにサスペンス、ファンタジックホラー、または吉本新喜劇とあらゆる角度で奇想天外な作品を放つ後藤が、とことん笑って思い切り泣けるハートウォーウォーミングな作品を手掛けるのは、彼の名を世に知らしめた代表作『パコと魔法の絵本』が映画化された2008年以来、約2年ぶりとなる。

―― 今回の舞台も、キャストが豪華かつ異色ですね。
【後 藤】 新しい人との出会いや科学反応は本当に楽しみですからね。たまに「なんでこんなの選んじゃった?」という回もありますけど。お笑い芸人のウーイェイよしたか(スマイル)、彼に注目してください。間違いなく度肝を抜かれます。渋谷が揺れますよ。

――この豪華なメンバーの中でウーイェイさんですか?
【後 藤】 信じられないでしょ? でもね、最初の読み合わせの時にウーイェイがしゃべり始めた瞬間、みんな手を止めてコイツに目を奪われました。ベテランの団時朗さんは「“本物”は違うね〜」なんて、感服してましたよ。演技力の高さも、存在感も目を見張るものがありますよ……って、ここまで言っても信じてないでしょ? でも、このお芝居はウーイェイが持っていきますよ。

■『パコと魔法の絵本』は後藤にとっての“出世作”であり“足かせ”

―― 今回のお話にもありますが、後藤さんの作品は「忘れる」という人間のメカニズムをフォーカスした作品を何度か書かれてますよね?
【後 藤】 確かにそうかもしれないですね。過去作品でも、人物と顔が一致しない記憶障害を扱った作品だったり、その日ごとに記憶が消えて行く『パコ』もそうでしたね。人の記憶のメカニズムが解き明かされない限り、僕は食いっぱぐれることがないのかも(笑)。

――私は人間にとって記憶よりも、“忘れる”機能が大事だと思います。忘れることができなければ、生きていけないような気がします。

【後 藤】 そうですね。ただ普段、人は「覚えておくこと」「忘れること」の判断は脳が無意識に進めています。でも、ちすんちゃんが演じてくれるお話「TEARDROP VENDER」の主人公は、嫌な出来事があったら、空っぽのキャンディーマシンに呟くだけで、自分の記憶から削除できます。

―― 忘れたいことをキレイに削除できるなんて、便利なマシンですね。

【後 藤】 どうでしょう? 例えばひどい恋愛をして傷つく。でも、だからこそ次は素敵な恋愛へと進めるでしょ。怒られて悔しい思いをしたから、踏ん張る心の強さが生まれる。なのに、嫌なことはすぐに忘れていけるなんて、どんな人間ができるんでしょうね? 怖いことなんて何もないし、恥ずかしいという感情もない、とても醜い人間だと思いませんか?

―― 触りを聞いただけでそそられます。幕が上がるまで後藤さんの舞台は先が読めませんが、本当に楽しみです。

【後 藤】 でしょ(笑)。満足してもえらえる自信はありますよ。

―― 今回も凄く笑えて、たくさん泣かされそうですね(笑)。ただ、ハートフルストーリーという点で、映画『パコと魔法の絵本』を意識されることはないですか? 世間の人が後藤さんの作品に対して感想を語るときにパコが1つの基準になっているように思うのですが。

【後 藤】 そうでしたね。パコが基準になっちゃいましたね。だから、ぼくはあの作品がヒットした後、そのほとぼりが冷めるのを待っていたんです。僕のイメージを“後藤=泣ける感動作の人”で固めたくなかった。だから、パコの熱が冷めるまで、いろいろな作品で思い切り遊びました(笑)。今年4月にやった観客参加型のお祭りのような舞台「LEFT STAFF」とか吉本新喜劇とか。あとは、お隣さんと恐竜の骨を奪い合うという「恐竜と隣人のポルカ」みたいな、オカシな作品とかね(笑)。

―― 感動作を敢えて避けてきたということですか?

【後 藤】 そうです。だからここ数年は作品の構想があっても表に出せなかった。辛い時期でしたよ、感動させちゃいけないんだもの(笑)。求められるものだけを作るといった、お客さんのリクエストに左右される作家にはなりたくないです。だけど、常にお客さんが喜ぶ作品や「そう、こういうのを観てみたかったの!」と言ってもらえる作品を提供できる作家でもありたい。

■本広克行監督と「そろそろ一緒に何かやろうか」

―― 以前、別のインタビューで映画を撮ってみたいとお話されてましたが、今も興味はありますか?

【後 藤】 やってみたいですね〜。

―― 映画を作られるなら、やはり舞台とは全く別物になるのでしょうか?

【後 藤】 どうだろう? うーん……やりたいことがありすぎて追いつかないですね。ただ、場面転換のシーンで舞台は役者の動きをつけたりしますけど、映画はそれが不要ですからね。脚本の段階で頭を悩ますのかな。それも楽しみですけどね。

―― 近い将来、長編監督のご予定は?

【後 藤】 監督業は分からないですね。ただ実は僕、本広監督と昔から仲良しでね。そろそろ一緒に何かやりましょうという話があるんです。ただ、あの人も賢い人だからな〜。出身の四国を題材にうどんの映画を作ったり、ヨーロッパ企画さん(京都出身の劇団)の舞台を映画化してみたり。

―― 爆発的なヒットとはいきませんでしたが、楽しい作品ばかりですね。

【後 藤】 興行成績なんて関係なしで、好きなことを、好きにやってるもんね。それで何年かに1回、本気で“踊れ”ばいいんだもんな〜(笑)。ずるいよね、良い生き方だよね。シルベスタ・スタローンみたいな男ですよ。どうしようもない駄作に出演し続けて、周囲が“あの人、大丈夫かな?”って心配し始めるころに『ランボー』や『ロッキー』シリーズでスクリーンに復活する! みたいな。どうしよう、こんなこと言っちゃったら書けないよね(笑)。

 どこまでが本気で、どこからが冗談なのか? 先の読めない劇作家・後藤ひろひとが作、演出、出演の3役をこなす舞台「『スリー・ベルズ』〜聖夜に起こった3つの不思議な事件〜」は8月10日(火)〜29日(日)まで東京・渋谷PARCO劇場にて上演。以降、仙台、札幌、名古屋、大阪にて上演。TEAM NACSの音尾琢真、岡田浩暉、石丸謙二郎、ちすん、佐戸井けん太ら全11名のキャストが出演する。


>>舞台「スリー・ベルズ」公式サイト
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