Vol.03 ピクサー/ディズニー作をヒットに導く吹替の現場!映像翻訳・杉田朋子杉田朋子(TOMOKO SUGITA) 2002年に全世界で5億2536万6597ドルの大ヒットを記録(配給調べ)した『モンスターズ・インク』から11年。“怖がらせ屋”のサリーとマイクの「学生時代」を描いた、現在公開中の新作『モンスターズ・ユニバーシティ』もロングヒットを続け、興行収入70億円を突破と破竹の勢いだ。そこで転職サイト「ORICON STYLE“Career”」では、同作の日本語吹替版翻訳を手掛けてきた映像翻訳家・杉田朋子さんにインタビュー。性別、世代、国境をも越えて愛されるピクサー/ディズニー作品を、日本人の心に届ける翻訳の妙とは? 吹替え版の翻訳では“長さ”が命! 難関は「歌」吹き替え版の翻訳では“長さが命”。その尺を計るために「同じシーンを何度も何度もしゃべったりもしますね」と、実作業についても話は及ぶ。「例えば怒鳴り合うシーンの多い作品だと、書き上げた時には喉がガラガラになっていることもあるんですよ(笑)。あとは泣きながらの台詞も難しいです。泣いた時の話すリズムは役者さんごとに全く違いますから。嗚咽が入る、言いよどむなど、間もリズムも予測できない。私自身は演技経験なんてゼロですけど、とにかく実際に喋ることで長さを計っています」。 一方、翻訳の際に最も苦労するシーンについては「歌です」と即答。「英語は1つの音符に1つの単語が載りますけど、日本語は1音に1文字。台詞と比べてさらに日本語の入る量が少なくなります。そして音楽に合わせ、リズムよく歌詞を訳すという…もう、どうやってこの内容を盛り込もうかと(笑)。本当に悩みどころですよ」とトホホな笑いを浮かべた。 今回の『〜ユニバーシティ』でも、前回の『〜インク』に続いて歌のシーンは登場する。しかも、『ユニバーシティ』だけあって、今回は校歌だ。「劇中の短いシーンと、別のフルバージョンの収録もあったんですけど、これがまた非常に難しくて(笑)。校歌らしい歌詞を考えつつ、でも古過ぎる言葉遣いを盛り込むことも避けたい。悩みましたね」。 サリーならこんなセリフは言わない…何度もチェックバックを重ねたカットもまた、同作で最も印象深い場面については、湖畔でサリーとマイクが友情を確かめ合うシーンを挙げた。「いつもはマイクがおしゃべりでまくし立てる役で、対照的にサリーは口べた。でも、ここではサリーが胸に溜まったものを打ち明ける長台詞がありました。ディズニーさんとも『サリーはこんなこと言わないよね』と意見を交わしながら、何度も何度もチェックバックを重ねました」と打ち明けた。 推理ドラマ、恋愛ものなど多ジャンルの作品を受け持つなかで、好きなジャンルは「人間ドラマ」という杉田氏。「このモンスターズでも、マイクの前向きさや健気さ、サリーと一緒に困難を乗り越える様子は人間ドラマに通じるところがって、翻訳をしながら感動しちゃうんです。台詞の掛け合いも本当に面白くて、お仕事とはいえ心から楽しませてもらっています」。 次のページ「翻訳業スタートから5年目に立ちはだかった”長さの壁”」へ >>
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