ブギ、スウィング、ロカビリー、ソウル、ブルースといったルーツミュージックをバラエティ豊かに聴かせる３人組バンド「夜のストレンジャーズ」。通称・夜ストが、1年10カ月ぶりにアルバム『トラブルボーイズ』をリリースした。「バンドは楽しい」という原点からブレることなく、各自の音楽的センスに磨きをかけて、誰の言葉でもない、独自の音を響き奏でた13曲が並んだ充実作だ。今回の人生グラフは、この夜ストのリーダー・ミウラこと三浦雅也が主人公。音楽的には高く評価されながらも、日本のマーケットではいまだビッグセールスに恵まれず、それでも「音楽は一生の仕事」と歌い続ける“吟遊詩人”の人生グラフとは・・・。。

　　母が持っていたレイ・チャールズなどのレコードで開かれた音楽への扉。それからロカビリーやソウル、R&Bのルーツ的レコードなどを買い漁るようになる。

　「いわゆるオタク、レコード・マニア。収集癖は10代の頃から何も変わっていなくて、どんどん深くなっているけど（笑）。当時は、レコードを手に入れて、それを聴いて満足していた。弟はギターをやっていたんだけど、自分は音楽をやるタイプとは思っていませんでした」

　大学進学を機に地元の秋田を離れ、横浜で一人暮らしを始めた。金と時間があれば、レコードを探しに出かけ、買っては、聴く。そんな日常に変化が訪れたのは、大学2年の終わり。2才年下の弟から「エレキギター、もういらないからもらってくれない？」という連絡が入った。「いらないなら、もらっておくか」。そこで、初めて楽器を手に入れた。

　「20歳からギターを始めたら、練習が楽しくて、『人生グラフ』もちょっと上げました。楽器を手に入れたら、すぐにバンドがやりたくなって。大学で同じ講義に出ていた友達とか、バイト先で楽器やっている人に声かけて、自分たちのバンドを作りました。最初の1、2年はロックンロールのカバーが中心だったんですが、オリジナルを作ってみようと思って、ギターをジャンジャカ鳴らして、適当に鼻歌を歌っているうちに1曲できた、みたいな感じで。それから、曲作りも楽しくなってきちゃって。音楽の理論的なことは何も勉強していなかったけど、フィーリングだけで楽器も作曲も意外とすんなりできたのは、いろんな音楽を聴いていたからかもしれないですね」

　　バンドに熱中する一方で、大学3年になった三浦は“普通に”就職活動を行い、エンターテイメント系の会社から内定をもらう――が、なんと単位が規定に満たなくて留年。

　「卒業できなかったので、１年待ってくださいとお願いしたら、待ってくれた。理解のある会社だったんですけどね。1年後、無事卒業して、就職したんですけど、1ヶ月で辞めました。ゴールデンウィークの休み明け、普通に出勤しようと、最寄り駅まで行ったんですけど、その日はすごく天気がよくて、『あ〜、会社行きたくないな〜』って思って。キヨスクでビールを買って、ホームで飲んで、『会社辞めます』って連絡して。以来、ずっとフリーターです」

　典型的な5月病！？

　「突然、電話1本で、会社を辞めるなんて、社会人として無責任な行為だったと思う。就職した会社に不満があったわけではない。でも、やめて正解でした。自分は会社勤めには向いていなかった。実際、肉体労働のほうが苦じゃないし、音楽活動も続けていきたかったし」

　それからというもの、アルバイトを転々としながら、音楽を続けた。三浦のバンドには人が集まっては離れ、一人で各地を転々としながら道端で弾き語りもした。音楽で飯を食っていく、そんなあてもないままに・・・。

　「20代の頃って音楽がやりたいから、バンドが楽しいから、やっているだけって感じで。今思えば、音楽で飯を食っていくための努力も足りなかったと思うし、だからプロになるチャンスもあるはずもなかった。音楽的にも、自分ではいいと思って歌っていたけど、たぶん今、聞いたら全然良くないと思う」

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