コンビ結成10周年のロザン。国公立大学に通った“高学歴”が売りのお笑いコンビで、とくに京都大学法学部卒の宇治原史規は、いまやテレビのクイズ番組等に引っ張りダコ。大阪を拠点に、全国区の人気を得たロザンの2人だが、そのすべては計算ずくだった！？その“真相”を、相方・菅広文が自伝的小説『京大芸人』（講談社）で明らかにした。コネもカネも七光りもない、いわゆる普通の家庭の子が、いかにして芸能界で名を上げたのか。32才の人生グラフを描いてもらった。

菅は、1976年10月29日、大阪府高石市に生まれた。2才の頃、内斜視の治療で目の手術を受け、術後のリハビリのため1年ほど入院もしたという。牛乳瓶の底のように分厚いレンズのメガネをかけていたそうだ。メガネが割れたら大変なので、運動も制限された。

　菅　　2才の時、目の手術を受け、1年ほど入院。この時は地獄でしたが、そんなに不幸な時期はない人生を送ってきました（笑）。小学生の頃からわりと優等生だったんですが、それが中学1年の時に、長野から大阪に引っ越したとたん、全然、勉強についていけなくなってしまって。それがショックで学校に行くのが嫌になった時期もあったけど、あの時、無理やりにでも学校に通って、よかったと思っていますよ。でなきゃ、宇治原と知り合えなかったと思うんで。

　そんな菅の人生グラフは、高校生になってから急上昇。人生最初のピークは、高校3年に進級する春、初めて宇治原の家に遊びに行った時だ。そこで、菅は唐突に、「芸人になれへん？」と宇治原を誘い、「芸人になったとき売りになるから京大入ってや」と提案する。しかも、それを宇治原はその場で、快諾したのだ。

　菅の著書『京大芸人』には、「（宇治原が）京大入ったのになんで芸人になった？」という世間一般の疑問に応えるように、その経緯が綴られているのだが、それにしても飛躍しすぎなのでないか？

宇治原　僕は、何か決めてほしいタイプなんですよ。こうせい、あーせいと言われたらできるんですけど、0を１にするのは苦手。菅は0を1にするのが得意なタイプですね。

　菅　　僕は0を1にして、それを誰かに10にしてもらいたいタイプです（笑）

宇治原　確かに、唐突に思えるけど、僕としては、言ってもらってよかった。

　菅　　宇治原と話していると楽しかったし、それが仕事になったらいいなぁと思っていて。お笑い芸人になろうと思ったのは、やっぱり大阪で生まれて、大阪に住んでいたからでしょうね。

宇治原　そうやな。大阪で生まれてなかったら、芸人やってないな〜。絶対、やってないと思いますね〜。たまたまだけど、2人とも中学生の頃に、大阪に戻ってきたっていうのもね。芸人の道を選ぶことにつながったのかもしれないですね。

「芸人になる」ことを決心した次の日から、2人の猛勉強が始まった。

　菅　　一緒に勉強してみると、宇治原と僕の勉強法は全然違っていた。今回、本を書いてみないかという話をもらって、相方がなぜ京大に入ったのに芸人になったのか、その紆余曲折とともに、どうやって宇治原が京大に入ったか、彼の勉強法もしっかり書きました。たまに、受験生を対象にした講演会に呼ばれて行くと、宇治原の話を聞く高校生の目の輝きが違うんですよ。だから、宇治原がどうやって勉強していたのか、どんな受験生活を送っていたのか、客観的に書いたので、参考にしてほしいと思いますね。

　スケジュールの立て方、教科別の勉強法、マークシート対策などが、かなり具体的に記されている。これを読むと、宇治原の「頭がいいところ」は「効率がいい学習法を知っている」ということが、よくわかる。果たして、宇治原は京大の法学部に現役で合格。一方、菅は第一志望の大阪府立大をはじめ、一つも受からなかったという最悪の事態に・・・。

　菅　　受験に失敗したことを宇治原に伝えたら、「1年待っとくわ」と言ってくれて。嬉しかったというより、ほんまに、アホちゃうかって思いましたね。京大の法学部に受かったっていうのに。弁護士にでも何にでもなれるっていうのに。

宇治原　選択肢はそりゃ、いろいろあったかもしれないけれど、高校3年生の時点で芸人が一番いいと思ったんでしょうね。自分は芸人になるんだって、決まってしまった感じですね。だから、何も迷うことはなかったですね。

　とにもかくにも、宇治原を京大に入れることに成功した菅は、「1年で大阪府立大に受かるため」、真面目に予備校に通う。すべては、芸人になるためだ。その間、宇治原は京大で“チャラチャラ”したサークルに入って、青春を謳歌しながらも、“芸人になる”ということを忘れることはなかった。

　しかし、大学に入ることと、芸人になることはイコールではない。2人は、いかにして芸人になるための道を見つけたのか。そこには、また不思議な「縁」＝「出会い」があった。

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