2013年09月12日 09時00分

【働きビト】いとうせいこう、成功の鍵は「笑い」の処世術

作家、タレント、ミュージシャンなど、すべての原動力は「笑い」と明言し、ポジティブシンキングの秘訣を語るいとうせいこう (C)oricon ME inc. [拡大する]

作家、タレント、ミュージシャンなど、すべての原動力は「笑い」と明言し、ポジティブシンキングの秘訣を語るいとうせいこう (C)oricon ME inc.

 テレビにラジオ、舞台など表舞台で活躍する一方で、作家としては16年ぶりに上梓した『想像ラジオ』(河出書房新社)も話題を集め、さらに恒例『第6回したまちコメディ映画祭in台東』(9月13〜16日)の総合プロデューサーをも務めるいとうせいこう。ORICON STYLE“Career”では一人何役も担いながらも、各ジャンルで結果を残してきたいとうにインタビューを実施。仕事を楽しみながら成功させる「笑い」を原点に据えたポジティブ処世術を語ってもらった。

■こだわりが生み出した仕事の好循環

―― いよいよ今年も『したコメ』開催ですが、その一方ではテレビに舞台、執筆活動…。多様な仕事に向かう動力源はどこにあるのでしょうか?

 僕は人前に出ていると書きたくなるし、書いていると人前に出たくなる。1つのことをやり続けていると、クサっちゃうタイプだし、色々なことを常に目を向けている反動が新たな動力となるんだよね。

―― でも、せいこうさんのスゴイところは、各ジャンルで人の記憶に残る作品を残しているところですよね。それは、決して容易なことではないと思うのですが。

 そこは・・・一言でいえば僕は運がいい(笑)。ただ、関わるジャンルは色々だけど「これ以上でも以下でも、野暮ったくなるし意味がない」という、僕の好きなゾーン(美意識)は、嫌になるぐらい決まっているんだよね。そこを崩さずに来たから、今のテレビ屋たちからは“いとうが参加する番組なら、きっと『変なもの』にはならないはずだ”と、ある程度の信頼を得られたと思うんだよね。

 自分のなかで良し悪しの判断を明確にしたうえで仕事を継続していくことはとても大事なこと。ただ、そこから好循環が回り始めるまでの“準備期間”は、ちょっと歯の食いしばりどころになるかな。

■テレビ局から不採用連発!? 就活で知った挫折「天狗だったのかな」

―― 今のせいこうさんのお仕事を観ていると、過去の職歴に「会社員時代がある」ことがとても不思議です。

 まぁ出版社の編集部だからね。当時の僕はピン芸人として活動していて、しかも結構ウケていた。なのに、テレビ局は全部落ちてしまった。「こんなに他人は自分を認めてくれないのか・・・」と落ち込んでさ。あの時に「なんで、俺を認めないのか?」という“超”挫折を知りました。いま思い返せば天狗だったんだろうね。

 実際の編集の仕事は「編集会議で何を発言できるか?」っていう企画力がすべて。そこで新入社員の僕は『読者ページが面白くないんで、僕にやらせてください』って立候補したの。そこからナンシー関(故人)さん達がブレイクしていって、ページもどんどん面白くなってさ。

 これがテレビの新人ADだったら、どんなに短いワンコーナーでも担当できるまで数年かかる。その間に、僕は人のやり方を押し付けられて、嫌になって辞めていたと思うんだよね。そう考えるとあの時出版社に履歴書を送ったっていう運の良さかもしれないし、ポジティブな出来事だって僕は捉えている。

■前向き思考の原動力は“笑い” 「愚痴(グチ)を言うなら笑える悪口(グチ)」

―― 挫折を「いい転機になったと」と言い切ってしまうポジティブさはステキです!普段から、物事を否定したりされないのでしょうか?

 否定しても、何も始まらないんだよね。だから、僕の場合は『嫌いなものとは一切かかわらない』。ただ、批評はいいんですよ。鋭い批評は本質を現わすから。だから、愚痴(グチ)を言うなら悪口(グチ)を言います。相手がどんな上の人でも、思い切り痛快なヤツを。周りはヒヤヒヤしつつも、本質を射抜きすぎて、思わず吹き出しちゃう。そういう悪口を言うのはむしろ好きだね。アハハッ。

―― せいこうさんの仕事の姿勢や、その前向きな思考の原点は「笑い」ですか?

 うん、それは確実にありますね。本当に笑えることはもちろんだけど、逆に「まぁしょーがないかぁ」という笑いも自分を救ってくれるし…自分にとって“笑い”はすごく大きいですね。これで単なる真面目だったら、きっとやってられないもん(笑)。

 愚痴なんか言うより、偶然見つけた素敵なアルバムやバンドの話をする方が絶対いい。そうすることで、僕から出てくる言葉は自然とポジティブな言葉や話が多くなる。それを聞いて、周囲は「いとうってポジティブな人だ」と受け止めてくれる。これは僕にとっても、周りの人にとっても、すごく良いことだよね。

―― まさに“いとう式”好循環が信頼へとつながった「したコメ」ですが、今後の展望は?

 まずは目指す完成形に近づけるように、今後は猛ダッシュで走り続けるつもりです。上映作は毎年変わるし、何が出てくるか分からない。どんな形になるかはアドリブの要素が大きいけどね。今年は特に良い物ができたと思っているので、来年は「今年に負けないように作っていかないと!」と、スタッフにプレッシャーを掛けています(笑)。

 いとうが総合プロデュースを手掛ける『第6回したまちコメディ映画祭 in 台東』は、今年も東京・上野、浅草を拠点に喜劇映画の上映を中心に様々な観客参加型イベントを開催。鬼才・園子温監督の初コメディ『地獄でなぜ悪い』をはじめ、人気劇団・ヨーロッパ企画が初参戦となる「京都発ショートコメディ映画まつり」など、プログラムも充実。

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