2010年03月19日 12時00分

リストラをきっかけに夢が結実 シンガー・ソングライター、ケヴィン・レニックが初来日

こんなシンデレラストーリーが実際にあるなんて・・・ 夢を叶えたケヴィン・レニック  [拡大する]

こんなシンデレラストーリーが実際にあるなんて・・・ 夢を叶えたケヴィン・レニック 

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 米俳優ジョージ・クルーニー主演の映画『マイレージ、マイライフ』(ジェイソン・ライトマン監督、3月20日公開)のエンド・クレジットに流れる「UP IN THE AIR」を歌うシンガー・ソングライター、ケヴィン・レニックがこのほど初来日し、ORICON STYLEの単独インタビューに応じた。

 レニックは米ミズーリ州セントルイス出身の52歳。彼の作った歌が同作のエンディングに起用された経緯が、実に興味深い。彼は2008年秋に長年勤めてきた広告代理店を突然解雇されてしまい、それをきっかけに若い頃からの夢だった音楽の道を切り開いた“リストラ・シンガー”なのだ。

 映画『マイレージ、マイライフ(原題:UP IN THE AIR)』の題材はまさに、リストラ。クルーニー演じる主人公ライアン・ビンガムは、年間322日間も出張し、マイレージを貯めることだけが生きがいの独身男性。彼は企業のリストラ対象者に解雇を通告するプロフェッショナル“リストラ宣告人”で、2度と会うことのない相手に人生のやり直しを勧めていくのが仕事だった。

 レニックがリストラを機に作った曲の中に「UP IN THE AIR」があった。「人生どうする気かたずねられても 答えは宙に浮いている」と歌う同曲は、まさにリストラされた際の心情を綴ったものだった。

 「僕が作った曲と同じタイトルの映画があると聞いて、なんて偶然なんだろうと思っていたら、僕が住んでいるセントルイスに撮影隊が来るという。しかも、その映画の監督が、僕が通っていた大学で講演会を開くと聞いて、これは何としても僕が作った曲を監督に聞いてもらいたいと思いました。その日が来て、僕は講演会に出かけ、質疑応答の時に手を挙げて、僕が作った歌を聞いてくださいと伝えました。ライトマン監督は『面白い経緯でいただいたものは、きっと面白い』と言って、僕の歌を録音したカセットテープを受け取ってくれたんです」

 そして、ライトマン監督は偶然にも同じタイトルで、映画のテーマと歌詞が見事にシンクロしていたレニックの歌を映画のエンディングに起用したのだ。

 あまりにも話が出来すぎていて、全米で初めて彼を取材したCBSのインタビュアーも「君の話を脚本にしたら、プロデューサーはこんな嘘っぽい話は映画化できないと言うだろう」と驚嘆したそうだ。

 本人の口から改めて事の経緯を聞き、驚きで言葉を失っている記者に、「もっとすごい偶然があるんだよ」とレニックは身を乗り出して話した。「僕が最も驚いたのは、同映画のオリジナル・サウンドトラックに僕が音楽を始めるきっかけを作ってくれたバンド、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの曲が入っていたことなんだ」。

 「サントラは映画の登場人物の1人」と考えるライトマン監督は自ら選曲して、映画を仕上げた。憧れのバンドの曲と、自作の曲が1つの映画、1枚のCDにパッケージされたことが、レニックにとってはもっとも「アメージング」な偶然だった。

 「高校の頃から、歌詞を書いたり、曲を作ったりしていた。でも、シンガー・ソングライターとして生活していけるのか不安があったし、失恋したり、いろいろあって音楽の道をあきらめて就職した。それが、思いがけずリストラされて…。自分の人生が音をたてて崩れ落ちていく最悪の気分を味わった。本当に僕には何も無くなってしまったと思った時、僕に残っていたのは音楽をやりたかったという想いだけだった。モヤモヤした感情を音楽に託そう、もう僕には音楽しかない、そう吹っ切ることができたんです」

 同作の主人公は、プライベートでは人生のあらゆる局面で深入りせず、人間関係の煩わしさを嫌い、家族さえも避けて生きてきた。映画は、そんな主人公が、予期せぬ出会いをきっかけに、“今までの自分”に疑問を抱き、“これからの自分”を考え始め、少しずつ変わっていく姿を描く。

 レニックはリストラを機に“今までの自分”に区切りを付け、“これからの自分”を歩み出した。そこで学んだのは「友達のありがたみと、自分が本当はどうしたいのか、心の声に耳を傾けることの大切さ」だった。

 そして今、「こんなに幸せなのは初めてというくらい、楽しんでいます」というレニックは、「売り出したいCDアルバムの構想がすでに2枚分あるんです。CDが大ヒットしてくれたらいいけど、生活費を稼ぐための仕事も必要になるかもしれない。これから先、何が起こるかわからないけれど、音楽は続けていきたいです」と笑顔で語った。

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