2014年06月12日 10時00分

【働きビト】豊川悦司、監督の「バカヤロウ」に心酔 過酷な山岳ロケの舞台裏とは

怒号飛び交う立山連峰での、過酷な撮影秘話を明かした豊川悦司(撮影:片山よしお) (C)oricon ME inc. [拡大する]

怒号飛び交う立山連峰での、過酷な撮影秘話を明かした豊川悦司(撮影:片山よしお) (C)oricon ME inc.

 日本映画界になくてはならない存在となった俳優・豊川悦司が、ORICON STYLE“Career”の連載『働きビト』に初登場。ロケの過酷さで知られる木村大作監督の最新作『春を背負って』では、立山連峰で行われた撮影に参加し、土砂降りの悪天候のなかも夜中3時に山へと出発など、ウワサに違わぬ現場だったという。静まりかえる雪山に響き渡る、木村監督の「バカヤロウ」の怒号に、愛慕さえ感じたと笑うベテラン俳優の仕事論とは。

■監督の指示が“絶対”である心地よさ

── 地上3000メートルに立つ山小屋での撮影。かなり過酷だったと伺いましたが、どのくらいの期間、山に滞在されましたか?

 撮影では1ヶ月半ぐらい山小屋にいたと思います。山に登って、数日泊まりで撮影をして──というのがトータル5回くらい。最初に山に登ったときは、夜中の3時ぐらいに出発したんですけど、どしゃ降りの大雨でした。自然相手なので、こちらの予定通りにいかないのは当たり前。1週間、山に滞在して1〜2日撮影ができれば御の字の世界でしたね(笑)。

── そのようなロケ現場で、一番元気だったのが74歳の木村監督だと伺いました(笑)。

 元気でしたね〜。圧倒されました。限られた時間なので、現場が慌ただしいこともあったけれど、本物の映像が撮れたと思います。360度、山に囲まれた世界で、監督が「あそこで撮る」と言えば、みんな言われた通りにそこに行くんです。そこで、「なんでわざわざあんな遠いところに?」とか、「ここじゃダメですか?」とか、そういう“疑問”が一切生まれないんですよね。指示があったら、全速力でそこに向かって、準備して、カメラを回す。そこに反発も疑問もない。

 人の数だけ考え方はあって、何を言われてどう感じるかはもちろん人それぞれ。今は、どちらかというと、そっち(個)が大事にされがちだけど…。この現場には、いい意味での“全体力”がありましたし、「なかなか捨てたもんじゃないな」って思えましたね。

■自分を押し殺して着いて行くという“快感”

―― 木村監督の“人間力”が、スタッフやキャストの皆さんの背中を押す現場だったんですね。

 僕もいい歳になったから、誰かの意見に言われるがままついていくことが、どんどん減ってきましたけど、この現場では自分を押し殺してついていくという快感もありました。山間の風景のなかで、監督の怒鳴り声だけが響き渡るんです。「ばかやろう!」と言うと、「ばかやろぉ、ばかやろぉぉぉ……」と、こだましていく。不思議な現場ですよね(笑)。でも、僕にとってはなんて愛情深くて、なんて心地いい言葉なんだろうって思えました。

 人生って素敵なこともある反面、徒労という言葉に置き換えられる“分からないこと”や苦労もたくさんありますよね。でも、決して“捨てたもんじゃない”。この映画は、そんなシンプルなメッセージが伝わってくる作品になっていると思います。

 木村大作がメガホンを執った人間ドラマ『春を背負って』は14日(土)より全国公開。東京で暮らしていた主人公・長嶺亨(松山ケンイチ)が、山岳事故で突然他界した父(小林薫)の遺した山小屋を、自分が継ぐと決意し、小屋に集う様々な心の傷を抱えた人々や家族との家族の絆を、立山連峰の壮大な自然を舞台に描き出す。

■仕事を楽しむ神ワザとは?
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