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Vol.14 嬉野雅道、『水曜どうでしょう』に出会って感じた仕事のおもしろさ

人生楽しいじゃないって思えた瞬間に、本当に大人になれた


北海道テレビ内の会議室でカフェをオープンする嬉野D(書籍『ひらあやまり』より)

――本の冒頭では、嬉野さんが会社内の会議室で勝手にカフェを始めたところから始まりますよね。非常に楽しそうで、自分がその職場にいたら行ってみたいと思いました。

【嬉野】 なんでしょうね。ある時不意に思ったんです。自分が会社の中で勝手にカフェ始めたらどうなんだろうって(笑)。元々僕がコーヒー好きだったということもあるけど、就業時間中に会議室に勝手に「カフェ始めました」って張り紙をして、勝手に呑気なことをしている人が社内にいたら、何かしら会社の気分が変わらないものかしらって(笑)。自分の中で何か思うところがあったんでしょうね、この頃社会が不寛容に厳しいものになってないかな、とかって。私のようなおっさんは昔の社会も知ってますけど、比べてみると昔の方がゆったりしていて。だったら怒られるまで勝手にゆったりしてみっかと(笑)。

――そういう風通しの良さのために抗う精神って、元々持っていたんですか?

【嬉野】 人って、自分が持ってる元来の性質ってありますよね。でも成長していくうちに封印しようとしますでしょ。その方が得だったりするから。だって元来の性質をまる出しにしたくても、実力が伴わないと痛い目にあうってことをね、大人になるにつれ知ることになる。でもね、『どうでしょう』をやっていくうちに、自分たちの感覚まる出しでやってもそれを他人に広く受け入れられるんだってことを知りました。「これってつまり、俺は俺のまんまでいていいってこと?」そんなこともあるんだってことが分かった瞬間に、元来の性質のままで生きることの楽しさを知ったということはありますよね。そしたら、それはもう捨てられない。

――ということは、元来の自分でいるためにも、貪欲に、必死になって結果を出す必要がありそうですね。

【嬉野】 社会ってね、意外に理屈が通らないところがあったりするんです。理不尽だったりする。でも、そこを疑問に思って異議を唱えても「そんなに気にくわないんだったら、ほかでやれば?」とかって言われてね。その時、社会の中で、ひとりで生きていく自信がなければ、自分が無力であることに気づくもんですよ。でも、だからといって、理屈に合わなくても決まりに乗っかる方が楽だって位置を選んだら、人は自分の頭で考えなくなりますよね。それだけは絶対したくない、というか、それだけはやれないなっていうのが僕の中にあって、大した自信はないけど、「でも、そこは負けない」っていう。だから自分の頭で考えて「やった方が良いかもな、と思ったことは実際にやってみる」っていうね。僕も僕なりに社会で生きて、わりにひどい目にあっていますけど、まあ、ですからこの本はね、そんな、ひどい目にあっているおっさんだからこそ書ける(笑)、ま、読んで損のない本でしょう(笑)。

 『どうでしょう』をやっていく中で「大人になっても自由に出したい自分を出していいんだ、ああ人生って楽しく生きられるじゃないか」って思えた瞬間にね、僕は本当の意味で大人になれたのかもしれない。自分をまる出ししていると嫌われることもありますよ、でも、だからこその出会いもある。こういう風に「本を出しましょう」と言ってもらうことにもなり、その先にまた別の出会いがある。そうやって受け入れてくれる人に巡り合えることに、僕はホッとするんです。

『ひらあやまり』(KADOKAWA)

著者:嬉野雅道(『水曜どうでしょう』カメラ担当ディレクター)

発売日:7月17日(金)

価格:税別1200円

グラビア8ページを含む全264ページ

 “うれしー”の愛称でお馴染みの、北海道発ローカル番組『水曜どうでしょう』のディレクター兼カメラマン・嬉野雅道による初の単独著書。『どうでしょう』最新作アフリカロケの裏話や大泉洋とのエピソードをはじめ、一介のサラリーマンが人生を振り返って感じた幸せのヒントが満載。



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